iPodとウォークマンの比較
今から15年以上前に初めて買ったMP3プレイヤーはクリエイティブメディアのNOMADだったような気がします。
まだMP3プレイヤーが世に出始めた頃です。
PC watchの古い記事で調べてみると、内蔵メモリ32MBで3万円くらいしたみたいですから、今は同じ値段でメモリ容量は千倍になっていますね。
その後、もう少しこなれた製品としてのMP3プレイヤー(今はDAPと呼ぶのがかっこいいみたいですが)を買ったのは、iPodからでした。大きな不満も無く、長年iPodを買い換えながら使っていました。
でも時々SONYのウォークマンの方が音がいいという噂を聞きました。一度自分で使って試してみようと、買ってみました。
ウォークマンを買う前は、iPod touch第4世代を使っていました。本体裏面が金属ピカピカで、全体にツルンとしたフォルムで薄くてかっこよかったですね。正直言って、それほど不満はありませんでした。
そして買ったのは
SONYのオーディオ製品を買うのはカセットテープの元祖ウォークマン以来かも(どんだけ昔だよ(^_^;)で、本当に久々でした。
子供の頃はSONYに対する憧れもありましたし、SONYを嫌っているわけではないのですが、オーディオに限らず近年購入したSONY製品はほとんどありませんでした。
このウォークマンは1年くらい使ってきました。
そして、結局新しいiPod touch第6世代に買い換えてしまいました。私には残念ながらウォークマンの価値が分かりませんでした。
(1)ハイレゾ
私がウォークマンを見切った一番の原因はハイレゾです。今のウォークマンの売りの一番といえば「ハイレゾ」ですからね。でも私にはハイレゾは不要でした。
ハイレゾの技術的な意味までは否定しません。少なくとも私には価値がなかった、あるいは分からなかったということです。
最新の録音で、同じ曲をハイレゾとノーマルで聞き比べたら、もしかしたら聞き分けられる違いがあるのかもしれません。でも私は最近録音されたような音楽をほとんど聴きません。何十年も前に録音された音楽が大半です。
SONYは数十年前の録音もハイレゾ配信を始めています。そこで、CDで持っている曲のハイレゾ版を
からダウンロードして、ふだん聞いている圧縮音源(AAC、256kbps)と聞き比べました。
すると……、違いが分かりませんでした(^_^;)
元の録音が古いというのもあるでしょう。でもそういう音楽ばかり聴くのですから仕方ありません。それなのに、古い曲でもハイレゾ配信されている曲は、単品だと1曲540円もして、アルバムでも3200円もして、その上1曲で150MBくらい消費するのです。
今までなら1曲せいぜい10MBなのにですよ!
えらく高価で馬鹿でかいのに、私のダメな耳ではその音の違いが分からないのですから、ほとんど喜劇です。
SONYはそれだけの金を取ってデータを売っているのですから、古い曲でもハイレゾ配信の方が音がいいという自信をお持ちなのでしょう。
でも私は今回の経験から、すでにCDで持っている曲を、CDより高い値段のハイレゾで買い直そうとはとても思えません。
私は価値あるデータなら、それなりのお金も出すし、そのためのデジタル資源も準備する気満々です。
実際、自分で撮った何万枚の写真は全部RAWで残していますし、自分で撮る動画も4Kにして(ちょっと過剰かなとは思いつつも)100Mbpsで残しています。そのためなら大容量のSDカードやHDDをいくらでも買います。
でもハイレゾの1曲150MBのデータに、その容量に見合う価値を見いだせないのです。ハイレゾの音楽データには、SD動画を無理やりフルHDにアップコンバートした時のような、容量をデカくしただけの印象を持っています。
SONYもハイレゾを本当に普及させようと思っているのなら、データの価格は大幅に下げるべきと思います。特に古い録音の曲はノーマルと同じ値段でいいんじゃないでしょうか?それでなくてもユーザーは大量のメモリを消費するというコスト増を強いられるのですから。
(2)音質
ハイレゾについては(1)で語りました。ここでは従来のノーマルな音楽データでの比較です。私は可逆圧縮も使っていません。違いが分からない割にデータが大きいからです。iTunesではAAC、256kbpsでエンコードしています。
その同じファイルをiPod touchとウォークマンで聞き比べました。イアホンはふだん使っているShure SE535LTD-Jです。
んー、……、やはり違いが分からない(^_^;)
ウォークマンは「DSEE HX」などの音質改善機能があり、これを使うと確かに音がよくなったような気がします。じゃぁ、「DSEE HX」を入れてウォークマンを使えばいいじゃない?ということになりますが、「DSEE HX」をオンにするとバッテリの消耗が早くなるという噂もあり、長時間使う時はオフにするという本末転倒みたいな話になります。
もう一つ重要なことは、私は電車の中で使うので、外の騒音も大きく、そんなに微細な音の違いを議論する意味があまりないのです。
静かな部屋でじっくり聞いて、「んー……、んー……、んー……、違う??……かも?」ぐらいの違いしかないのであれば、こだわっても仕方ない気がします。まぁ、オーディオの話で「それを言っちゃーおしまい」かもしれませんが。
(3)音楽管理ソフト
iPodがiTunesで、ウォークマンがMedia Goです。
ソフトとしての洗練されたかっこよさはiTunesの圧勝です。
ここに貼った画像を見ても、左のiTunesは「おしゃれなカフェ」で、右のMedia Goは「スーパーのチラシ」みたいな感じです…。
iTunesはiPodを使っていない人でも名前を聞いたことくらいはありそうですが、Media Goはウォークマンを使っている人しか知らないのではないでしょうか。
で、そのMedia Goを立ち上げてみると、いかにも古い昔ながらのWindowsアプリの風貌をしています。しかもWindowsのみの対応です。
別に奇抜なユーザーインターフェイスや派手な見かけを求めているのではありません。かつては世界で一世を風靡したSONYのウォークマン、その音楽を管理する純正標準ソフトですから、日本のソフトウェア技術の粋を集めて作られていても不思議ではありません(期待しすぎ?)。iTunesとは設計思想が違うけれど、「さすがに日本のウォークマンだ!!」と思わせるソフトであってほしいという願望があるのです(私だけ?)。
iTunesで曲管理をして、ウォークマンにデータを転送する方法もあるので、Media Goとウォークマンは必ずしも一体ではありませんし、ウォークマンのハードウェアの出来とは関係ないことかもしれません。でも、Media Goのなんとなくダサい感じは期待を裏切られた感じがして、とても残念なのです。
余談ですが、日本はソフトウェアの開発力が高くない気がします。世界的な工業製品を作っているメーカーは日本に多数ありますが、世界的なソフトウェア開発力を持っている日本のメーカーは、……ありますか?ソフトウェア専業でなくてもAdobe、Google、Appleに対抗できる日本のメーカーはどこでしょうか?
Media Goの出来が日本のソフトウェア開発力の現状を語っている気がしてなりません。
(4)電池の持ち
ウォークマンF880シリーズは電池の持ちが悪く、Wi-Fiを切っていても数日放置しておくとかなりバッテリーが減っていました。Androidはアプリが裏で何かやっていることがあるようで、なるべく不要なアプリを削除したりと少し試してみましたが効果はありませんでした。
iPod touchもWi-Fiを入れていると一日で電池がなくなりますが、Wi-Fiを切っておけば1週間くらいは放置しておいても大丈夫でした。
(5)その他
(1)~(4)までが、ウォークマンからiPod touchに出戻りをした主な理由です。
あとは外観とか、iOSとAndroidの使い勝手の違いとか、液晶の美しさとか(これはiPod touchの勝ち)、ちょっとした好き嫌いの問題です。
結局、私には両者の音質の違いが分からなかったので、自分にとっての使い勝手のよさ、製品としての好き嫌いで判断するとiPod touchになりました。
最後に
SONYは「ハイレゾ」を前面に出して売っていますが、その売り方も私にとってはマイナス要素でした。「ハイレゾ対応」などと称してヘッドホン、イアホン、アンプ、スピーカーなどの関連商品も、ついでに買い直させようとしている感じがして、なんか嫌な感じがするからです。別に「ハイレゾ対応」機器などと誰かに認めてもらわなくても、従来の音響製品で十分に音は鳴るし、自分なりに満足のいく音であればそれでいいわけです。
そういうメーカーとしての姿勢も、あえてウォークマンを使い続けようという気力を削ぐものになりました。
内心は日本のメーカーの製品を使いたいと思っているのですけどね…。